代表者挨拶

代表 小早川 明德

明けましておめでとうございます。
旧年中は、皆様のご支援とご指導のもと、多岐に渡る分野の事業に取り組むことができましたことに、改めて心からの感謝を申し上げます。

[ご報告事項 ]
 一つは、親の職場に子供が一日付き添う子供インターンシップ「FUKUOKAみらいフェスタ2016」は、職場での親の動きや発言を目の当たりに親の存在感を改めて感じたうえ、報告会では職場は違っても共通の感動体験を再確認して、家族ぐるみの理解へと昇華させていく生きた家庭教育の実践は、実行委員長の金子直幹(株)福岡トヨタの社長のご活躍と相俟って飛躍的な成長を遂げ2.000名に迫る実績となりました。
 また、永年、地道に地域社会、地域産業、あるいは、教育現場で青少年に志や実践の素晴らしさを教え特筆すべき成果を上げられた教育者を表彰する「福岡県市民教育賞」は、横山正幸福岡教育大学名誉教授をはじめとする設置以来の選考委員会の方々の確かな選眼力によってすばらしい受賞者の選考がなされ、今年も農業後継者の教育と農業界と経済界との相互理解の促進の為に長年率先して汗をかいて来られた鶴 基 アグリホープ九州 相談役に産業教育奨励賞が授与されるなど、多くの社会教育事業家に光が当てられました。
 二つ目は、映像コンテンツのトレードフェアである「東京国際映画祭ジャパン コンテンツショウケース」で今年も九州PRブースを設置し、2020年の東京オリンピックを目指す日本文化の象徴であり九州発信の神話である「ドラマティック古事記」、九州一丸で復興、まさに九州における1億総活躍社会の実現と、成果を上げた九州の地域連携の一層の進化を目指す「熊本地震の復興」、アジア漢語圏の共通価値を求めて「孫文生誕150年」という三つのテーマを設定して広く参加者に発信し多くの実りある成果を得ました。
その一ヶ月後には、九州へのインバウンドの促進とコンテンツ産業の振興を目的に、作家.脚本家.プロデューサー.制作会社の一流の方々を集めて開く国際会議「アジアTVドラマカンファレンス」を「マルチプラットフォーム時代のドラマコンテンツの課題」というテーマのもと開催しました。
加えて、九州発で2020の東京オリンピックでの日本の精神文化の世界発信を目指す市川森一原作の「ドラマティック古事記 in TOKYO」を、東京新国立劇場オペラパレスにて、高円宮久子殿下をお迎えして1800人の観劇者を迎え開催するなど文化コンテンツ事業の拡大に努めました。
 三つ目は、九州経済フォーラム創立30周年記念事業としての第一弾「地方創生九州大会~九州地域間産官学連携サミット」は、九州大学箱崎キャンパスで石破茂地方創生担当大臣(当時)をお招きして開催、秋には、「孫文生誕150年」のタイトルのもと2日間開催。九大伊都キャンパスでの「孫文が残した国際的遺産と未来へのインスピレーション"と題した九州大学主催のシンポジウム、中でも、それに先立って開催された"日本ジョナサン.チョイ文化センター起工式 鍬入れの儀"は、新しい歴史を開くに相応しい第一歩を刻したと言えるでしょう。2日目の電気ビル共創館では「アジア太平洋地域協力のフロンティア九州」シンポジウムの開催、此の記念事業のために制作された資料映像「孫文を支えた九州人」(20分)が初公開され参加者は深い感動に包まれました。又、九州経済フオーラムとチョイ会長率いる香港中華総商会や新華集団との連携協定の締結、中山大学の李 新春先生と北九州大学の研究機関を巻き込んだ3件に上る協定書の交換も新たな歴史を創る期待を抱かせるに充分なものとなりました。
 四つ目は、福岡県高齢者能力活用センター"はつらつコミュニティー"の設立20周年記念事業です。派遣者が年間7.000人を超え、登録者もあと少しで10.000人に上るというセンターの9月に開催された記念式典では、衛藤晟一内閣総理大臣補佐官をお招きして、厚生労働省職業安定局長より感謝状を授与され、永年にわたりご協力いただきました受入企業、永年勤続者などの表彰が行われる一方で、「はつ.らつ.シニアフェスタ2016 & 企業説明会」を開催しました。現在は、長寿社会の到来の中、高齢者が、とりわけ、医療.福祉分野で "社会から支えられる存在" から、生きがいを持って "社会を支える側に立とう" と、その道標(みちしるべ)となる「(仮) 60歳からの教科書」作りに取り組んでいます。
 五つ目は、安倍晋三内閣総理大臣を迎えての「1億総活躍・地方創生全国大会in九州?震災を超えて‐」です。7月27-28日に福岡で195自治体の首長、2100名の全国のリーダーにお集まりいただき開催された大会は、安部総理の特別公演を始め高市総務大臣、加藤一億層活躍担当大臣のご講演を柱として、自治体サミット、九州プレゼンス、震災サミット、一億総活躍シンポジウムと中身の濃い実践的な示唆に富む会となりました。その後には、自治体の首長を中心とした熊本震災の現地視察も行われ次なる課題を浮き彫りにして幕を閉じました。

[新年の事業展望]
 先ずは、九州経済フォーラム創立30周年記念事業の、沖縄.台湾で開催する「東シナ海から見るアジア」。新しい"海の視点"をテーマにした事業は、私たちに、新たな視野の広がりと、我が国日本の確かな明日への"国際関係の在り方-とりわけ、アジア地域における考え方"を示唆するものと期待しています。
 二つ目は、九州インターンシップ推進協議会の法人格の取得後の対応があげられます。福岡県インターンシップ推進協議会として17年前に地域産官学の協力のもと発足し、全国に先駆けてそのニーズに応えてきた協議会も、時代の変遷の中、大学と企業、そして、協議会に大きな変化が求められています。それは、単に、学生のインターンシッププログラムとしての事業にとどまらず、その後の、社会的視野の拡大という実践的な学びの機会の提供、観光や農業などの地域資源を活用した「地方創生」という、地域活力の創出、地域産業の育成をも視野に入れた学生プログラムの展開です。これぞまさに産官学の縦と横の「地域連携」を必要とする事業となります。"地域でできた協議会" ゆえに実施可能な多様なプログラムを積極的に展開していきたいと思っています。
 三つ目は、アジア事業活力創出会議の法人化です。此の組織は、国際関係が地方へ浸透し始めて約30年を経過する中に、動機も様々で、旅行に同行した仲間の集いから、最近の国際ベンチャーまで多様な交流が繰り広げられて今日を迎えましたが、各国の名を冠した組織への期待は高まりを見せ内外の関係機関から寄せられる対応能力も質量共に大きくなって参りました。各団体の活動内容も満足いくところ、全く機能不全をきたしているところと様々の中、アジアという括りの中で、"人脈のネットワーク"、"情報のネットワーク"、"経験のネットワーク"を1本化したプラットホームを設けエネルギーを蓄積して、国際学生の活動・就学支援も含め、アジア各国関係団体の事業活力を向上して真にお役に立つ団体としていきたいとの構想であります。
 四つ目は、JASCA 全国学生連携機構が3月の東北大会や夏の九州大会という、地方大会を積み上げ、AIEと共に主催し総括として横浜で予定している「1億総活躍・地方創生"若者・学生"全国大会」の開催です。これは、東北や、九州の震災を教訓として、改めて国民一丸となって、我が国"日本"の産業経済や精神文化の再構築に立ち上がる次代の基本軸足を固める事業であります。政府の主要施策であります"1億総活躍運動"も若者・女性・高齢者の社会参加の推進のステージの上に、日本人の特性を活用した発明.知財産業の振興、伝統芸術の文化産業の振興、自助.共助精神の発露としての地域運営機関の企業化によるソーシャルビジネスの創出など、事業を通じたアイデンティティーの醸成を意識した地方創生への取り組みへと進化していきます。それらの施策が地域で爆発する事で、全国的に日本人の気概.気風が満ち溢れ、結果として、その成果が海外に波及して日本人への再評価に繋げることができるものと考えています。
 五つ目は、九州未来会議の開催であります。九州の産官学連携の強化を図り、30年後の誇りある九州を創ろうと、産業の、人材の、地域のイノベーションの目標を掲げ、その実現に向けた行動を推進します。1億総活躍全国大会の開催も九州ブランドとしての「ドラマチック古事記」を、東京オリンピックの開会式のオープニングセレモニーへの採用を働きかけることになったのもこの会議の成果です。今回は、何を生み出すのか、楽しみに論議を重ねて行きたいと思います。
 六つ目は、「ショートショートフィルムフェスティバル」の福岡開催です。アカデミー公認の事業で九州.アジアの短編映画の募集が出来、九州や、スポンサー企業、参加自治体をテーマにした作品コンテストも実施できます。その知名度は飛躍的に拡散され、インバウンドへの貢献も著しいものと思われます。併催される企画事業は参加機関団体の腕の見せ所です。市民参加を促す本事業は、20年近くに及ぶ長年の実行委員会の実績の上に、開催地域の情報を広く提供する事ができるでしょう。参加市民の知的好奇心を満たし、地域文化との融合効果と地域の誇りに満ちた求心力を創出する事業として期待して準備したいと思います。
 七つ目は、継続事業のイノベーションです。FUKUOKAみらいフェスタ、福岡県市民教育賞などの地域を巻き込む事業は、ある意味結果が確認しやすい事業です。志と価値観を共有できる機関団体の拡大こそ、本来のミッションを果たすために大きな意味を持つ対応と言えましょう。積極的に広く地域社会を「巻き込む」事に挑戦したいと思います。また、福岡産業振興協議会、九州の女ネットワークなどの運営受託の団体に関しては、大きな時代の曲がり角にあります。夫々のリーダーや理事会、幹事会に対し、真剣に事業や運営の課題をさぐり新たな提案と問題意識を提議していきたいと考えます。とりわけ、組織の皆様の論議ができる「場」創りの設定こそ求められる事と思います。

[組織としての方向性]
 中経協組織と分蘖して4年経過しました。一番大きな違いは、中小企業の経営者との日常的な接点が薄くなっている事です。意識するしないに関わらず中小企業の経営者の"オーナー意識"に学ぶ事の多かった事を、改めて思い直しています。常に、生き残りをかけて戦い、そのために、死力を尽くして知恵を絞り、取引先を開拓し、事故やクレームの時は、水漏れの無きよう細心の対応と配慮をおこない、事故後にあって、寧ろ、"災い転じて福と為す" 信頼関係の構築がなされている事もしばしばであります。この"全霊をかけて事をなす"ことで企業も経営者も大きく成長する機会を得る事となるのです。企業が成長するには、経営者が伸びなければならない。団体も、私たちが成長しなければ、その役割を満足に果たす事はできません。その原点に立ち戻って全てを始めたいと思います。私たちの成長の糧は、毎日の一つ一つの仕事にあることを思い直して見たいと思います。
 私は、年末に「最近、いろんな事業を推進する上で、この恵まれた人の関係の中、以前のように、地域のリ?ダ?の方々のお力をお借りすることが少なくなった気がします。」という指摘を受けました。私は、一瞬、胸を突かれた思いでした。私たちの組織は、その高く大きい使命を果たすため、使命の高さと自分の力の明らかな「格差」を一流の人の力をお借りして結果を出すことをモットーとしています。私たちの取り組む事業の使命は、それぞれ、とてつもなく大きなものばかりであります。私たちの力量だけでは到底果たせぬものであることは明白な事実であります。それならば、堂々と一流の方々のお力を頂こうではありませんか。一流に学ぶことは、一流に近付く一番の早道です。同じ人生の貴重な時間を使うのですから、私達は、一流の人と一流の仕事をして一流の組織を作りたい。それが一流の自分を作る一番の早道だと確信しています。
 あるノーベル賞の受賞者のインタビューでこういう発言を耳にしました。「研究に没頭していたら、ある時、ふっと、予期せぬ成果を産むことがある。」これは"セレンディピティー(serendipity)"という現象だと教えられました。これまでの受賞者からも同様の声をお聞きしたことがあります。つまり、これは、成功者に共通した体験とも言えるでしょう。彼らの、世界が驚く大発明・大発見は、案外、ご本人が予期せぬ成果であったと想像すると実に愉快になります。この世に神様がいらっしゃって一生懸命の人にご褒美が与えられる。私たちの事業も、同じことが言えると思います。
 実は、東京で年末のご挨拶に伺った折、「 2018年(平成30年)、政府として、フランスで東京オリンピックに向けて"日本の文化を世界に発信する"事業を企画している。」との話をお聞きしました。エントリーしてみたいと思っています。「日本の精神文化の世界発信」これぞ、まさに、私たちのミッションであります。我が国日本の国際的再評価が期待出来る。その再評価が、ブーメラン現象として、私たちが目指す日本人の気風と気概を取り戻す機会を与えてくれると信じています。
 「 "生命の本質"は、創造の法則性に満ちている。"期待して待つ"ことが大事である。」との言葉も世界の大発見者の言葉であります。「期待して待つ」私達は、知恵を出し、お力を借り、汗をかき、力いっぱいに頑張る。そして、期待に胸膨らませて待つ心境になりたいと思っています。

[世界の動向ーアジアと日本]
 アメリカのトランプ大統領の登場、英国のEU離脱、中国の国際法規無視の海洋基地の建設など、世界経済の減速の中にあって一段と不透明感が増しています。イラク・レバントのISIL(アイシル)の過激派グループ、自称イスラム国(IS)による 無差別テロの発生は、世界で群発し多くの人々を恐怖に陥れている一方で、夥しい難民の発生が当該国の深刻な政治課題となっている現実を忘れてはならないと考えます。加えて、日々進歩する情報の世界化の中で、企業や個人を狙ったサイバー攻撃と、その2次災害ともいうべき犯罪の発生、特定の目的を持って展開される国家間のサイバーテロに至っては、世界の情報戦争が始まり、既に戦争状態が続いているとのトップリーダーの危機意識が重要になったと思います。情報戦争による国家機密の漏洩は言うに及ばず、国民生活の運営基盤の破壊による予想される社会生活の混乱は、外国勢力による実質的な内戦状態を作り出す事を可能にする事態となりうるものであります。この様な生々しい国際関係の下では世界の大国の力関係が世界の新しい秩序を創りだすものですが、今は、その前段のせめぎ合いの中にある、まさに、"混沌の時代"であります。これらへの対応は、外交においても防衛についても、ある意味、国家としての原則を明確に主張 し続ける事が求められると考えます。韓国の政治的混乱、北朝鮮の核開発とその使用につても、予測のつかないもどかしさもあって強い危機感を抱くものであります。
 そういう中にあって、現在の我が国の対応や国民の意識、とりわけ各界のリーダーにおいては、何かにつけ危機意識の欠如が目に余る気が致します。昨年、我が国の将来を考える上で大きな課題を浮き彫りにした出来事がいくつもありました。主なものは第一に、天皇譲位 ("退位"と呼んでいる) であろう。これは、社長や局長、総裁や総理の退任とは、全く次元の違う国家の根幹の"核"となるもので、果して、「讓位(退位)」なるものの概念が存在するものだろうかというところから考える本質的課題であり、今年は「日本」という"国家"を広く国民が考える機会を天皇御自ら賜ったものと考えその結論を注視したいと思います。
 次に、熊本地震での震災対応が教えたものであります。ちょうど、あの大津波の見舞われた東北大震災から5年、熊本地震は多くの犠牲の中で、九州という広域の地域的対応、熊本という県や市の自治体における対応、現地における被災者の地域リーダーを中心とした秩序ある生活運営とその支援まで、地震後の緊急対応から復旧復興への多くの教訓を残しました。あの神戸淡路の震災から、東北、熊本と、これらの災害が、一部の地域の出来事でなく、日本中どこでも起きておかしくないという国民の意識の目覚めがあったと思います。この国の安心安全に何が必要で、何が求められるのか。新しい日本を創ろうとする中でこれらの経験の成功と失敗の「学び」が次代の課題を明示してくれたと思います。
 加えて、政治に無関心と言われた若者が、選挙を通じて、地域を考え、社会の課題を意識し、"日本"という国家を考える改正公職選挙法が施行されました。いわゆる「18歳選挙権」の導入です。人は、その環境のもとで、様々な思いを形や行動に表現して行きます。若者が、選挙という行為を通じて様々な課題を考え、その選択として、選挙の1票を行使する。素晴らしい社会教育の"場"の提供であると思っています。その目覚めた若者の意識を、次なるステージにどう誘うのかが、今後の大きな課題の一つとなります。
 また、安倍総理がロシアのプーチン大統領を山口の大谷山荘に招待して、歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島の日本返還について協議しました。その効果は期待したものではありませんが、両国の課題を、真正面から論議したこの"一歩"を私たちは高く評価する必要があると思います。"難しいから止める"のではなく、"難しいから、一層の信頼関係を結び、それを間断なく積み重ねていくこと"こそ真に大事な勇気と言えるし、国民として支援の声をあげて行く必要があるのではないかと思います。韓国との竹島、中国との尖閣諸島、そして、ロシアとの北方4島の問題への我が国の姿勢は、世界の指導者が日本の将来を占う意味で注視している大事な課題ではないでしょうか。
 最後に、現在の我が国日本のあらゆる社会システムは、人口の増加に伴う経済の成長、水.空気.安全の保証、日本民族による日本人社会を前提に作られ運営されています。今、その三つの大前提が大きく変わろうとしています。一部は、今からの課題に対応した施策となった部分もありますが、その政策や法律、規律のパッチワークの状態が、チグハグの国家運営、地域の政策のミスマッチを生み出しています。この抜本的な見直し、いわゆる社会組織のイノベーション、これこそ我が国の「明日への基盤整備」であります。この観点から、社会事業、新規事業、経営参加などが構築されていくこと"こそ、私たちの事業構想・構築の鍵があるのです。これこそ私たちのミッションである「社会課題の事業化」ではないでしょうか。
 確かな国家観を持つ政治家、志の高い官僚、良識ある教育者、"道"を極める文化人、経世済民を目指す経済人。これらの方々が。もう一度本気で"誇りある日本"を創るために起ち上がる1年にしたいと思います。皆様の、いよいよのご壮健とますますのご活躍を心からお祈りしてご挨拶といたします。

平成29年(2017年) 元旦

一般社団法人 地域企業連合会 九州連携機構

会長 小早川 明德

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